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行き先決定 道中記 

F大学病院その1 その2

行き先は桶狭間!?

〜セカンドオピニオンその1
行き先決定〜

2004.1.1(木)言わずと知れた元日ぼやきガメクマ小ウサギ、義母、家族と家でなんとか無事にお正月が迎えられた怠けウサギ。今年は一年入院しないで、無事に日を送りたいなあ。と、ぼんやり思う。お屠蘇を飲み、お節料理をつまむ。酒盛り、お雑煮、お年玉、お年始のご挨拶・・・・普通のことが普通にやれることが一番幸せと、しみじみ感じる。ま、今のところ炬燵に入って、のらりくらりしている毎日だけどね。


1.6(火)退院後初めての診察日。「ゆっくりお話ししたいので、午後いらしゃって下さい。」と退院時にK先生に言われたので、K先生の外来終了に合わせ、約束の午後1時半に病院へ。ぼやきガメも一緒。

 やっぱりセカンドオピニオンは東京方面の大学病院かなあ。実家やTa姉の家に近い所ならついでに寄れる♪ 能天気に考える怠けウサギ。病院に到着。

 「セカンドオピニオンはF大M先生心サルコイドーシスの専門なのでそちらで受けて下さい。」とK先生。「F大って、どこにあるんですか。」初めて聞く大学名にちょっと戸惑う怠けウサギ。「住所は愛知県の豊明市になっていますね。」愛知県?東京と逆方向だぁ。意味もなくがっかりする怠けウサギ。「愛知ですか。ちょっと遠いですね。」とぼやきガメF大のHPの印刷を取り出すK先生。書いてある住所を見ると「愛知県豊明市田楽狭間」とある。田楽狭間ってあの織田信長今川義元と戦った「桶狭間」のことじゃん。信長好きのぼやきガメと戦国好きの怠けウサギ。ちょっと嬉しくなる。

 「いろいろ調べたのですが、心サルコイドーシス専門の方は少なくて。3人リストにあったのですが、お一人は留学中で、もうお一人は引退なさったようです。」とK先生。やっぱり心サルの専門家は少ないんだ。

 M先生心サルコイドーシスを長年研究していて、十数年間で100人近くの患者を診たことがあるとK先生からきく。年間7〜8人の患者を診るということになるが、これが多いのか少ないのか。やはり心サルはかなり希な病気の感じがする。それでも心サルの経験の無いK先生の診断と、経験のあるM先生の診断に差があるかもしれない。「きちんと診断し、治療をしたい」と望んだK先生の判断でセカンドオピニオンを受けることになった怠けウサギK先生の判断は尊敬に値するものと感じる。

 巨大な封筒を渡される。X線写真やMRI、ガリウムシンチ、血液検査、ホルター心電図などの検査結果が入っている。これを桶狭間まで持っていくのはちょっと大荷物だ。K先生の紹介状も受け取る。診察室を出ようとすると「あ、ちょっと待って下さい。」K先生が呼び止める。「心エコーのデータを入れ忘れていました。(^^ゞ」と別の小さめの封筒を渡される。「あ、封しないとおかしいですよね。(^.^;)」と慌てて糊で封をするK先生。口調は落ち着いているが・・・・だから可愛い?


 家に帰って早速ぼやきガメF大をPCで検索。大きい。循環器科の教授もひとりじゃない。M先生の専門は「循環器病/心筋疾患」とある。分かったような分からないような・・・・ともかく行き方を調べて、計画を練る。Infoseekの「乗換案内」が大活躍。午前中に病院に着くには何時に出ればいいんだろう。遠いなあ。

 前にTa姉のが送ってくれたサルコイドーシシスの本の心サルのところを開くと。あれ、執筆者の筆頭にM先生の名前がある。K先生の紹介してくれた先生は心サルの日本一の権威らしい。何となく安心する怠けウサギ


数日後 火曜日がM先生の外来の日とわかったので1月19日に行こうとぼやきガメと決め、F大に連絡をとることにする。F大のHPにあった病院の番号に電話をかける。電話は苦手な怠けウサギ。かなりドキドキする。受付の人が出て、循環器科に回してもらう。

「あの〜、S県のT病院からそちらにセカンドオピニオンで伺いたいのですが」ドギマギしながら用件を伝える怠けウサギ。「F先生いらっしゃいますか?」「そのような者はいません。」ガチャン!電話が切れる。あれ?なんで?・・・・・(?_?)

あー!、大学の名前と担当の先生の名前を間違えた・・・・・・(>_<) 

何やってるんだか。(-_-;) 恥ずかしい (・・;) 一人であせっている怠けウサギ

再び気を取り直して、もう一度電話・・・・・「あの〜、M先生にセカンドオピニオンを受けに参りたいのですが。」今度はちゃんと言えた。(^_^;)

 受付けの看護士さんらしき人がM先生の意向を聞き、時間を決める。けっこう親切だ。外来の最後の時間にということで「午後1時過ぎ頃に。」少しはゆっくり出られるかな。「初診は受付けが午前11時半までです。」やっぱり午前中に間に合うように行かなければダメだ。早めに着いて、約束の時間まで昼食でもとっていればいいか。とりあえず用件が済んでホッとする怠けウサギ。もう一度Infoseekの「乗換案内」で計画を練る。

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いざ出陣、桶狭間へ。

〜セカンドオピニオンその2
道中記〜

1.19(火) いつも通り子供たちを学校に送りだし、仕度をする。義母と義次姉のTo子さんに店は預け開店前にぼやきガメと家を出る。怠けウサギの検査データなど一式は大きな紙袋に入れてズリズリとぼやきガメが持っていく。

 最寄りの私鉄駅で通しの切符と新幹線の特急券を買おうとする。「新幹線の特急券は扱わなくなりました!」なんでぇ!!新幹線の乗換え時間があまりないのに。しょうがない。乗車券だけ買い、私鉄に乗り込む。

 JR駅に着く。乗換え時間13分。階段を降りエスカレーターを使い新幹線の改札へ。改札の手前にある新幹線特急券自動販売機に取りつく。一万円札を入れようとするがなぜか自動販売機が飲み込んでくれない。ベロ〜ンと何度も吐き出す。なんで〜!別の一万円札を試すがダメ。時間が無いときに・・・・千円札を試すとなぜか入った。慌ててあるだけ千円札を投入して、ナンとか2人分の合計金額支払う。

 新幹線の改札を通り、ホームに出る。間に合った。というか気が焦っていたわりに、余裕で間に合った。ホームはそれ程混んではいない。座れるかな?新幹線が入ってくる。けっこうな人数が降りる。車両に乗り込む。自由席の禁煙車両の前の方に二人掛けの空席を発見。ぼやきガメが紙袋をズリズリさせながらなんとか確保。これで豊橋駅まで寝て行ける。


 豊橋駅到着。ここで名鉄に乗り換える。乗り換え時間9分。けっこう際どい。

 少々急いで、階段を下り、新幹線の改札口を通る。あ、切符を取り忘れた。あわてて戻って切符を取って行こうとすると後ろの人に声をかけられる怠けウサギ。「それ僕のです。」あれ?赤面して、切符を持ち主へ返す。私の切符はどこ? 

 立ちすくんでいると、駅員さんが出てくる。「取り忘れて次の人が入れると引っ込んじゃうんですよ。」駅員さんはさっと機械を開けて怠けウサギ切符を取り出してくれた。恐縮して受け取る。「まったく、ドジなんだから。」ぼやきガメがつぶやく。


 何とか間に合い、乗り換え終了。平日の午前、電車は比較的空いている。4人掛けのボックス席に陣取る。店に来る営業の人から「名鉄沿線は田舎ですよぉ〜」と聞いていたがその通りだった。ウチの方ほどじゃないか。ちょっと小田急沿線に似ている。これから40分、のんびり行けるかな。

 いくつかの駅に止まり混んできたので、ぼやきガメの隣に移る怠けウサギ。すると突然、後の席から「あれ、ぼやきガメさんじゃないですか!」こんなところに知り合いはいないはず。驚く怠けウサギぼやきガメ

 声の主は、なんと数年前まで店に回ってきていたM社の営業のさん。M社は四国にある老舗。いつも季節になると会社の裏山で獲れる伊予柑を送ってくれたさん。何でここにいるの? 「今、名古屋方面を回ってるんですわ。」車より名鉄の方が目的の店に早く着けるので、たまたまこの電車に乗ったらぼやきガメ怠けウサギがいたという。本当に偶然。びっくり。数年ぶりの再会を喜び、近況など話をしつつ、名鉄電車は目的地へ。


 前後駅到着。この駅「前後」ってあるけどなんて読むんだろう?アナウンスを聞いたら本当に「ゼンゴ」でした。いかにも開発中の新興住宅地の駅という感じ。改札を出るとすぐ横にチマっとした駅ビル。中にベーカリ−が見える。駅の前は小さめのバスターミナル。バス停を調べ、バスを待つ。たいしてかからずF大行きのバスが来る。

 住宅街を抜け、丘陵地帯へ。新しい大学病院はみんな田舎にあるなあ。しばらくすると大きな銅像がある運動場の向こうに大きな建物群が見えてくる。F大学病院の玄関先に到着! で、でかい!(@_@) 目を見張るぼやきガメ怠けウサギ。通院していた国立病院の何倍もある。しかもきれい。ホテルのような巨大な建物。ここで、セカンドオピニオンかぁ。自動ドアを通り建物の中へ。入ると中は巨大な吹き抜けのロビー。きょろきょろ見回し受付を探す。

 入り口から少し離れたところに、かわいい受付のカウンター発見したぼやきガメ怠けウサギ。係の女性が3人並んで立っている。あそこだ!近づいてみると、結構大きい。ロビーが大きすぎて、小さく見えたらしい。「あの〜、セカンドオピニオンを受けにM先生のところに参ったのですが・・・」係の人に声をかける怠けウサギ。「はい、何科ですか?」事務的に答える縦ロールヘアのお姉さん。「循環器科のM先生セカンドオピニオンを受けに・・・・」「初診になりますので、手続きをして下さい。」にこりともせずに言葉を遮る縦ロールのお姉さん。なんかコワ(・・;)「はい」おとなしく用紙を受け取る怠けウサギ。必要事項を記入し、お姉さんに渡す。近くの椅子に座って待つこと少し。名前が呼ばれ、縦ロールのお姉さんから、テキパキと無表情に診察券が手渡される。私なんか悪いことしたかしら・・・・・ま、とりあえず手続き終了。循環器科の場所を聞き、受付を離れる。

 

〜藤田保健衛生大学病院〜

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桶狭間でもまた検査

〜セカンドオピニオンその3
F大学病院<その1

1.19(火)続き 相変わらずズリズリとデータ一式を抱えて、循環器科の外来にたどり着いたぼやきガメ怠けウサギ。まず目に入ったのは循環器科の受付のカウンター。そこにいた係の看護士さんに用件を伝え、データ一式を渡す。看護士さんはM先生に用件を伝えてくれ、M先生の診察室の前で待つように言われる。

 F大の循環器科の外来は診察室へのドアが10個以上並ぶ廊下の一角にある。各診察室のドアの前には長イスがいくつか並び、そこに患者らしき人々がぎっしりと座っている。ドアに『診察時間が○○分遅れています』なんて札がかかっている診察室もある。M先生のドアには時間の札は無く、ほっとする。何とか空き席を見つけ、座って待つぼやきガメ怠けウサギ。予定より早く済むかな?ちょっと期待する怠けウサギ。しばらくして名前を呼ばれる。


 中に入ると、M先生がデータを眺めていた。怠けウサギの医学部の教授のイメージはでっぷりした恐いおじいさん。実は母校の眼科のI教授〜〜学生オケの顧問 (^_^;) ところがM先生は中肉中背の落ち着いた研究者風の紳士、メガネの奥の大きい目が良く動く。恐い感じの方でなくてよかったぁ。

 M先生はデーターを眺めながら「これだけでは僕も何とも言えませんねえ。」そうなの?更にしばらく考えたM先生は「ガリウムシンチはウチの機械のほうが感度が良いのでたぶん出ると思います。やってみませんか?」と言う。ガリウムシンチはガリウムを体内に注射で入れてから2日間後に測定する。ということは最低もう一度来なければならない。そんなに何度もここに通うのは困るぅ。すかさずぼやきガメが「遠いので何度も往復するのは無理です。」とキッパリ言う。「・・・そうですか、仕方がないですね。」ちょっと残念そうにM先生

「では、心エコーだけでも。」とM先生。「心エコーは熟練の人がやらないとうまく異常が出ないから、今からもう一回撮りましょう!」え?まだ検査?さっきガリウムシンチを断った手前イヤとは言えず。「その結果を見ながらまた後でお話しましょう。はい。」診察室を後にするぼやきガメ怠けウサギ。もう12時は回っている。お昼ご飯は当分お預けになりそう。看護士さんに手続きをしてもらい、胸部X線撮影心エコーに向かう。


 まずX線撮影室へ。受付をして、いくつかの扉がある狭い廊下の壁にひっつくようにして並ぶ長イスに座るぼやきガメ怠けウサギ。名前が呼ばれるのを待つ。

 ここの廊下は病棟との通路になっているらしく、点滴を付けた人や車いすに乗っている人、あるいはスタスタと歩いている人など、おそろいのパジャマ姿(病院で貸し出しているのかな?)入院患者らしい人たちが通っていく。その他にも連れだって雑談しながら歩くの若いドクターらしき人々、売店の袋を持った看護士さん、時計を気にする年配のドクターなど、かなりの人が行き来する。そのザワザワした廊下の、歩く人の会話がハッキリ聞こえるくらいの距離の長椅子に、数人のX線撮影の順番を待つ人がじっと座っている。お昼過ぎのこの時間でも結構な人数だ。ともかく狭い。落ち着かない。

 「怠けウサギさ〜ん、○の扉からお入り下さい。」名前を呼ばれて扉を開ける。扉のすぐ向うは小さい部屋になっていて、衣服をそこで脱ぐ。壁に張り紙。

『当院では身体への影響を最小限にするため放射線の出力を小さくしています。撮影の際は撮影部位には衣類は着けないで下さい。』というような趣旨のことが書かれていた。

 え?普通は肌着一枚くらいは身につけて撮影するのに無し?ちょっと驚く怠けウサギ。そうなっているんじゃしかたがない、ちょっと恥ずかしい気もしたが、取りあえず衣服を脱ぎ撮影室へ。

 中に入ると比較的広い部屋にX線撮影機らしき機械が3台あり、側に白衣姿の係の女性がバインダーを持って立っている。3人いる患者以外で部屋にいるスタッフはその女性のみ。機械を扱う放射線技師さんの姿はない。覗き窓すらない。どうやって撮影する人と連絡しているんだろう?不思議に思う怠けウサギ。患者は女性のみ、それも胸部の撮影の人ばかりのようだ。

 係の女性はテキパキと患者を各撮影機に振り分け、撮影の姿勢を指導する。怠けウサギの前の年配の女性が撮影機の前に呼ばれる。係の女性が機械の前の姿勢を整える。怠けウサギも呼ばれ機械の前へ。その間に前の人の撮影「はい、息を吸って、止めて・・・・はい、楽にして。」お決まりの号令もこの女性がかける。次は怠けウサギ。同じようにして終了。上半身脱ぐのはちょっと抵抗があったけど、あそこまで必要最低限の人数で女性スタッフならば許せる・・・・かな。(^_^;) それにしてもあの係の女性、弱いとは言えいつも放射線を浴びていて大丈夫かなぁ、同性として心配。


 続いて心エコーへ。心エコー室のカウンターで受付をして、すぐ前の長イスに座って待つぼやきガメ怠けウサギ。結構時間かかるなあ。

 心エコー室は売店のすぐ側にあり、ドアが開いていて、前の廊下をぞろぞろ歩いていく若者たちが見える。たぶんここの大学生。明るく活気がある。対照的に心エコー室は、入り口のカウンターこそ明るいが、その奥にはカーテンで仕切られた小さな暗い測定室。静かに患者が出入りする。点滴をつけた子供がいたりして・・・・

怠けウサギさ〜ん、お入り下さい。」測定室のカーテンから若い落ち着いた感じの女性が顔を出す。あ、女性の測定者だ、よかった。ほっとする怠けウサギ。どうも男性が測定者の心エコーにはいい思い出が無い。

 いつものことだが測定室は心エコーの画像を観やすくするためか必ず暗い。奥にあるベッドに着衣を脱いで横になる。身体にタオルをかけてもらう。「横を向いて楽にしていて下さい。」測定者はモニター付の機械を操りつつ、左胸に端子が当てる。優しくスムーズに測定がすすむ。やっぱり女性の方が上手だなあ。

 しばらくして、突然せき込む怠けウサギ。数日前小ウサギと調子に乗って長く散歩して引いちゃった風邪。風邪を引くとすぐセキにくる怠けウサギ。ちょっと低めの室温のところで服を脱いだので、身体が冷えたらしい。ゴホゴホゴ、ホセキが止まら〜〜ん。「すみません。(ゴホゴホゴホ)」と怠けウサギ。「大丈夫ですよ。」と言いつつ困った顔の測定者。セキをすると身体が動いてしまい、検査が出来ない。

ゴホゴホゴホ・・・・(数分間中断)・・・・(何とかセキが止まりしばらく検査続行)・・・・ゴホゴホゴホ(再びセキ)・・・・(数分間中断)・・・・(セキが止まりしばらく検査続行)・・・・ゴホゴホゴホ・・・・

 なんてことを繰り返して、やっと終了。普通の倍の時間がかかってしまった。「測定結果が出るまでしばらくお待ち下さい。」と言われたので測定室を出て、受付の長イスにいるぼやきガメのところに戻る怠けウサギ。しばらくボケッと座っていると「測定結果は直接外来に送りますので、行かれてよろしいですよ。」と受付の人に言われる。そうならそうと先に言ってよ〜〜!!心エコー室を後にするぼやきガメ怠けウサギ。待ってた時間はなんだったの〜〜。

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97%サルコイドーシス!?

〜セカンドオピニオンその4
F大学病院その2〜

1.19(火)続き 再びM先生循環器外来へもどるぼやきガメ怠けウサギ。診察室の前にはさっきと違って長イスに座って待っている人はまばら。約束の午後1時はとっくに過ぎている。すぐに呼ばれて診察室に入る。もちろんぼやきガメも一緒。

 中に入るとさっきと同じように、怠けウサギのデータが所狭しと並んでいる。データーを眺めていたM先生、くるっとイスを回してこちらへ振り返る。「心エコーでも異常は認められませんでした。」ふーん。「ぼくの経験上、96、7%の確率サルコイドーシスと思われますが、100%サルコイドーシスという断定は出来ません。」そっかぁ。「限りなくサルコイドーシス可能性は高いのですが、診断基準に合致していないので『サルコイドーシス』と断定することは出来ないのです。」結局K先生とほぼ同じ見解だ。やっぱりという感じとちょっと肩透かしを食った感じが交錯する。

 更に怠けウサギの病状について説明しようとしたM先生ぼやきガメが手に持っている「サルコイドーシス」という本に目を留める。この本の心サルコイドーシスの項の執筆者のひとりはM先生である。「その本で勉強なさったんですか。」「はい」とぼやきガメ。「そうですか。・・・・ちょっと待ってて下さい。見やすい資料がありますから。」診察室から奥に消えるM先生。しばらくして小冊子を数冊持って現れる。

「どうぞ。」と手渡されたのは3冊の小冊子。専門の学会などに提出されたM先生のチームの心サルコイドーシスについての論文だ。一つは英文である。M先生は論文中の図や写真などを示しながら分かりやすく心サルコイドーシスについて説明した。怠けウサギぼやきガメは二人で一つの論文をのぞき込みながら、M先生の話を聞く。

○サルコイドーシス学会としては診断基準を見直そうという方向にある。
サルコイドーシスは自覚症状がない人から死の危険がある人まで、重症度の差が大きく全部を一つとするのはおかしいのではという議論があるため。

○40才代の女性の『房室ブロック』は統計上100%サルコイドーシス。
 いただいたのとは別の資料で、『房室ブロック』と診断された後にサルコイドーシスと診断された人の割合を性別年代別にした表を見せてもらった。

 M先生が勤務したいくつかの病院で、『房室ブロック』と診断された患者さんのその後を追ったもので興味深かった。ただ心サルコイドーシスという病気の性質上サンプル(患者)数が少なく、全部のサンプル数が数十人。内40才代の女性は3〜5人。「100%心サルコイドーシス」と言いきるのは無理があるが、かなりの率で「心サルコイドーシスの可能性がある」といえそうである。どの年代でも半分以上が後にサルコイドーシスと診断されていた。

○心サルコイドーシスはステロイド治療によってかなりの率で改善する。
 これはいただいた論文に詳しく載っていた。ステロイド投与の前と数年後の心機能を示したものである。

『房室ブロック』のみを起こし心臓の収縮能が正常な患者に対して、ステロイド投与を行ったもの(7例)と非投与のもの(13例)にわけ、数年後の心機能を追ったグラフを見た。ステロイド投与群と非投与群には明らかに心機能の低下に差があった。非投与群のうち2例は心機能の低下は殆どみられなかった。

ぼやきガメは非投与群の心機能が低下しなかった2例に、怠けウサギの症状も準じると思いたいようである。「こうなる方に懸けよう」と後で何度も言っていた。怠けウサギにステロイド治療はさせたくないということ。これ以上顔が丸くなっては困る・・・(-_-;)

○心サルコイドーシスは日本人に多い。
欧米には肝サルコイドーシスが心サルコイドーシスより多く、人種差がありそうである。

○サルコイドーシスの原因にアクネ菌説がある。

○PET(Positoron Emission Tomography、陽電子放射断層撮影法)のサルコイドーシス診断への応用
 これは「〜という研究もある」と言う程度のお話。確か静岡県の医師の研究だった筈。

○心サルコイドーシスは循環器の専門医でも見逃す事が多い。
これはM先生の経験上の話。原因不明の心停止による突然死の人を解剖して見ると心サルコイドーシスの事が多々あるそうである。完全房室ブロックで受診し、ペースメーカー埋め込みだけで心サルコイドーシスの処置をせず・・・・という場合がかなりあるそうだ。

などなど・・・・2時間くらいにわたり怠けウサギぼやきガメM先生にサルコイドーシスのお話をうかがった。M先生は研究者&講師の顔になり、怠けウサギぼやきガメは聴講生かゼミ生のように興味深く心サルコイドーシスの最先端の話が聞くことが出来た。

 最後の方に怠けウサギが以前『視神経乳頭炎多発性硬化症疑いと診断されたことがある』ことを話すと、今までご近所の開業医のS先生も主治医のK先生も「関係ありません」と断言したのだが、M先生は「今度学会で眼科の医師にも会うので、病名をメモさせて下さい。」と興味深げにメモした。関係ありそうなことは可能性が低くても疑ってみる。いかにも研究者のという姿勢である。

 話の途中で、ご近所の開業医のS先生が見逃される事の多い心サルコイドーシスをすぐさま疑ったことについて、何度も「優秀な医者だ。」とほめていた。最初にS先生に診てもらえた怠けウサギはラッキーだったようだ。

S先生には後日峠茶屋のどらやきを持って、お礼にうかがいました(^.^)

 あっという間に時間は過ぎた。M先生にお礼を言い、診察室を後にする怠けウサギぼやきガメM先生のお人柄でとても有意義な時間を過ごす事が出来た。


が、結局は

「97%サルコイドーシスだが確定は出来ない!」

という診断に変わりはない。無駄足だったとは思わないが・・・・・・・

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