処置の最中にMiさん到着。カーテン越しにちょっと笑ってあいさつ。笑顔がひきつっているのを感じる。「大丈夫」と自分に念じる。処置終了。あちこちにくっついているものを看護士さんに持ってもらって、廊下にあるストレッチャーまで自分で歩く。「頑張ってね!」同室のみんなが声をかけてくれる。何とか笑顔を返す。ストレッチャーによじ登り、横になる。いよいよ手術、いざカテーテル室へ。
#怠けウサギがカテーテル室に入ったあと、続いて現れたF先生にぼやきガメが「細かく縫ってやって下さい」と言ったところ、F先生は「わかった」というように軽く頷いていったそうです。
カテーテル室では、K先生、F先生、看護士さん、白装束のペースメーカーの会社の人2人が待ちかまえていた。怠けウサギはストレッチャーから降り、カテーテルの時と同じ巨大なX線の投影機の前のベッドに横になる。K先生が声をかけてくれる。看護士さんが顔の上にアクリルのような透明な四角い箱を被せ、そのうえを深緑色の不織布で覆い、テープ止めする。視界一面深緑になる。箱の隅にちょっとひび割れ。手術中このひび割れをずっと眺めていることになる。
右肩から胸にかけてにちょっと冷たい濡れたものがこすり付けられる。たぶん消毒中。「チクッとしますよ。」F先生の声。右鎖骨の下辺りが数ヶ所チクッチクッとする。たいして痛くはない。麻酔が効くまでか少し間を置く。
手術は大まかに言って次の通りである。
(1)鎖骨下の筋肉にポケットというペースメーカー本体を入れる場所を作る。
(2)静脈中にリードを這わせて心臓まで持っていく。
(3)心臓のペースメーカーの電気信号が伝わりやすいところにリードの先を持っていき、引っかける。
(4)ペースメーカ本体(ジェネレーター)をポケットに固定し、傷口を塞ぐ。
視界はふさがれているが、声と感触でだいたい今何をやっているかが分かる。カテーテル検査の時の様にベッドの縁をつかんだ手が痺れたりはしない。このベッドに横たわるのは2回目とあってカテーテル検査ほどは緊張しなかったらしい。人間って慣れる動物だったのね。
肩の辺りがボワンとした感じで、麻酔が効いているようだ。触られている感触はあるが痛みほとんどはない。時々脇を濡れたもので触られるのは血液を拭いているのかな。手術は順調に進んでいく。
「痛!」少し奥の方の処置になったためか時々チクッとした痛みがある。
「そう、痛いね。」と優しく言いながらもF先生は手を止める気配がない。
「痛!」
「痛いよね、ちょっと我慢してね。」作業続行。
カテーテル検査の時は、このくらい「痛い」と言うと麻酔を足してくれたのだが。
「痛!」
「痛いよね。痛いね。」
優しく怠けウサギに同意しつつF先生はそのまま処置を続ける。
うー、痛いよ〜。我慢、がまん。
しばらくしてF先生、「はい、今一番太い針を刺しますので、一番痛いです、我慢して下さい。」イヤな予感。「はい、痛いです、痛いね、痛いよね、はい痛い・・・」同情しつつあらゆる痛い表現をしてくれるF先生。しっかし、
#この時刺したのは、ポケットの中に溜まらないように出血した血液を抜くための管。F先生は「一番太い点滴の針と同じ太さ」と言っていました。刺した場所はペースメーカーを埋めんだ所のすぐ下。管の先には血液を溜める袋があり、手術後3日くらいで抜けました。この管の傷跡は小さいけど今でも残ってます。
この後は心臓にリードをもっていき、リードの先端の場所を決める。いよいよ白装束の人達(メーカーの人)の出番。心臓の電位の測定データーを無表情(な声)に読み上げる。それを聞きながら「この辺かな、ここ、うーん、この辺・・・・・」F先生がリードの先端の位置を調整している。「よし、ここで良いでしょう!」F先生がリードの先端の位置を決定したようだ。他のスタッフも同意の雰囲気。
いよいよ手術も終盤、のはずだったのだが・・・・
ジェネレーターを埋め込み、傷口を塞ぐためチクチク縫われる。細かい痛みがチクチク断続的にくる。我慢がまん。ガーゼが当てられ傷が完全に覆われる。「はい、終了です。」F先生が言うと、看護士さんが顔の上の覆いを外し、K先生がのぞき込む。「お疲れさま、終わりましたよ。」終わった〜。ホッとする怠けウサギ。
「最後にペースメーカーのチェックをしま〜す。」直径10センチくらいのドーナツ型の線のつながった白いもの(ペースメーカーの機能を測定する機械の端子)を右肩辺りに浮かせてもち、心臓の電位などをを測定する。白装束の人がデーターを読み上げると不穏な空気に包まれる。「あれぇ、あれれ、おかしいなあ。」F先生が言う。「もう一度」なんかヘン?「やっぱりダメだ。」ま、まさか。「もう一度やり直し。」えぇ〜〜!!!!「どうも微妙な心臓のようで、ペースメーカーがうまく作動しません。もう一度やり直します。」うっそ〜〜!
看護士さんが顔の上に例の覆いを掛け、テキパキと用意を整える。もう一度やるのかぁ。辛いというよりうんざりの怠けウサギ。
「せっかく細かく縫ったのにぃ。」F先生がぼそっと呟く。
「メス、そっちの。」再手術開始。まずメス(たぶん小さめ)で、傷口の糸を切るところから始まる。ポケットからジェネレーターを「よいしょ」という感じで外し、心臓部分のリードの先の位置の調整。再び白装束の人が測定し、データーを読み上げる。
「ここなら大丈夫そうだね。」F先生が念入りにリードの位置を決める。スタッフ一同同意の雰囲気。リードの位置決定!今度こそOKだといいなぁ。もうこれ以上はイヤだ。
リードの位置が決まったので、ジェネレーターをポケットに戻す。F先生の声がする「あれえ、一回ポケットに入れるとすべるなぁ。おっと。」まさか、ペースメーカーを床に落とした?・・・大丈夫らしい。「おっと、フタがうまく閉まらない・・・エイ!」F先生、しっかりやってよぉ。「これでよし、おっと・・・・・お、よし。」ずん、と肩にヘンな感触。ふぅ、うまくいったらしい。会話が聞こえているだけに怠けウサギにとっては冷や汗もの。
「ここでペースメーカーのチェックをしまーす。」さっきは傷口を塞いでからやったペースメーカーのチェックを今度は傷を縫う前にする。傷口が開いたままなのでなんとなく肩口がスカスカした感じがする。測定器の端子を傷の真上辺りに浮かして持ち、再び白装束の人が測定、データーを読み上げる。心なしかさっきより念入りにチェックしているようだ。データを聞いて、スタッフにホッとしたような空気が流れる。「今度は良さそうだね。」F先生が言う。スタッフ一同同意。
やっと傷口の縫合開始。チクチクした痛みが断続的に・・・あれ、さっきより痛い。痛い、痛〜!「痛!」思わず声が出る怠けウサギ。「痛い?、痛いネ、麻酔が切れてきたかな。」F先生は手を止めずに変わらぬ調子で言う。「麻酔を足そうか・・・」痛いー、何とかして。「う〜ん、あと少しだから・・・このまま行きましょう。我慢してね。」ゲゲ!このままぁ!う〜〜〜〜〜〜〜痛い、痛いよぅ、イタタタ・・・・
とっても長い時間に感じられたがなんとか耐えてようやく終了。傷口にガーゼが当てられる。「終わりました。お疲れさま。」顔の上の覆いが外され、K先生がのぞき込む。今度こそ本当に終わったらしい。右腕を固定するため、肩を包み込むようにしっかり腹帯を巻かれる。これで右腕は当分使えない。なんだか頭がぼーっとしている。ストレッチャーに移され、カテーテル室を後にする。
カテーテル室を出るとみんなが待っていた。ぼやきガメ、Miさん、そして「あれぇ、Izさんどうしてここに?仕事は?」びっくりの怠けウサギ。「心配だから来ちゃったよ。」とIzさん。Ta姉もこちらに向かっているという。「手術はちっとも終わらないし、待っているより来て顔を見たほうが良いと思って。」2人とも仕事を持っているのに遠くから来てくれた義姉夫婦。余計な心配かけちゃった。でも、気持ちが嬉しい。怠けウサギにしゃべる元気が残っているのでみんな一様に安心したようだ。
病室に着くと看護士さんに召集がかかり、カテーテル検査の時と同じように6〜7人がかりで「せーの!」ズルッとベッドに移される。
手術着から着替えさせてもらい、ベッドに落ち着いたころF先生とK先生、背広に着替えたメーカーの人が現れる。右肩のところに端子をおき、ペースメーカーを念入りにチェック!「大丈夫そうですね。」ほっとする怠けウサギ。ほっとしたのが思いっきり顔に出たらしい。「一番ほっとしたのは僕だよ。」F先生が苦笑気味に言う。先生もお疲れさまでした。
Ta姉もようやく到着。「手術はちっとも終わらないし、待っているより来て顔を見たほうが良いと思って。」Izさんと同じことを言う。「無事済んでよかった。」と。看護士さんが夕食を運んできた。スイッチを操作してベッドの角度を変え、身体を起こしてくれる。痛・・・傷がひっぱられる感じで痛い。我慢できる範囲なので、何とか夕食を口にする。
#この時の夕食は少し傷が痛かったこと以外、何を食べたかも記憶にない(・・;)
夕食を片付けてもらい、少し話をする。めまいまでいかないが視界がおかしい。貧血を起こしているような感じ。「ゆっくり休んでね。」Izさん、Ta姉、Miさん、ぼやきガメが帰り支度をする。「今日は有難う」そう言うのが精いっぱい。怠けウサギもさすがに限界、みんなが病室を出たのを見送り、目を閉じる。
ここで朝まで眠れれば良かったのだが、そうは問屋が卸さず・・・・1時間くらい眠った後、手術直後なので定期的に看護士さんは見に来る、寝返りを打てないのであちこち痛くなる、点滴で腕に鈍痛が有り鬱陶しい、少々興奮している等々・・・眠れない。電動ベッドの角度を変えたいけどモーターの音がして同室の人を起こしちゃいそう。結局、耐えられなくなって明け方に電動ベッドの角度を変えやっと眠れる。
#後から分かったのですが、同室の人は私以外ほとんど入眠剤を服用していたので、電動ベッドの音程度では目が覚めなかった様です(^_^;)